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独立した美容師が、最初に「安さ」で選んで後悔すること — クーポンで学んだ高い授業料

独立した美容師が、最初に「安さ」で選んで後悔すること — クーポンで学んだ高い授業料

独立、おめでとうございます。面貸し、シェアサロン、業務委託、あるいは自分の店。雇われから抜けて、これからは自分の看板で勝負する——その決断に、まず敬意を表します。

そして、独立直後のあなたの頭の中は、たぶんこうなっているはずです。「とにかく、お金が不安だ」。分かります。痛いほど分かります。だから、価格は安めに設定したくなるし、集客もクーポンに頼りたくなるし、道具も「まず無料か、一番安いやつ」を選びたくなる。

その気持ちが痛いほど分かるのは、私自身が、それで痛い目を見たからです。今日はその話をします。

藁にもすがってクーポンを撒いた、あの頃の私

お店をオープンして間もない頃、本当に、本当にお金に困った時期がありました。いろんなところからお金をかき集めても、自分の給料だけが払えない。でも、スタッフの給料や支払いは待ってくれない。

そんなとき、某大手予約サイトの営業さんがやって来ました。「あなたの街でもサービスが始まりました。今なら無料で掲載できます。クーポンを出せば、すぐにお客様が来ますよ」

藁にもすがる思いで、二つ返事で始めました。言われた通りにクーポンを発券して。

効果は、すぐに出ました。2〜3日後にはもう新しいお客様が来たんです。「これはいける」と思いました。——ところが。

クーポンをやめた途端、誰も来なくなりました(笑)。
接客にはかなり自信があったのに、戻ってきてくれたのは1割程度。ほとんどの方は、私の店ではなく「クーポン」に来ていたんです。

誤解のないように言っておくと、クーポンそのものが悪いわけではありません。新規のお客様に一歩踏み出してもらう「きっかけ」として、上手に使っているお店もたくさんあります。実際、私も使いどころによっては有効な道具だと思っています。問題は、クーポンを「きっかけ」ではなく「経営の柱」にしてしまうこと。当時の私は、来てもらった後の仕組み——もう一度来たくなる理由づくり——を何も持たないまま、クーポンだけに頼ってしまった。刺さったのは、そこなんです。

結局、その後うちの常連さんになってくださったのは、ご紹介で来た方や、自分で調べて来てくださった方たちでした。安さで来た客は、安さで去る。価値で来た客は、残る。——高すぎる授業料でしたが、一生ものの学びでした。

同じ実力、正反対の道を選んだ2人の先輩

この法則を、もっと鮮やかに見せてくれた人たちがいます。私の先輩2人です。2人ともカットが上手くて、話も面白い。実力は本物でした。そして、時期は違いますが、2人とも激戦区に自分の店を出しました。

先輩A — 周りに合わせて安くした

1人目の先輩は、激戦区ということで近隣店の価格を徹底的に調べ、同じか少し安い値段でオープンしました。クーポンもチラシも撒きまくって、当初はかなり繁盛しているように見えました。開店祝いの花を持って行ったとき、予約も取れないほどの盛況ぶりで、「すごいなあ」と思ったのを覚えています。

ですが、1年後。かなり厳しそうでした。

それはそうです。家賃がめちゃくちゃ高い場所で、値段を安くして、クーポンを撒いて。そんなことをしなくても十分やっていけるだけの技術と話術があったのに、値引きに頼ってしまった。そこから、だんだんと苦しくなっていったようです。

先輩B — あえて高くして、時間をかけた

もう1人の先輩は、同じく激戦区に出店したのですが、選んだ道は真逆でした。一緒に働いていた頃よりも、かなり高い料金で店を始めたんです。その代わり、1人のお客様にかける時間をたっぷり取り、軽いヘッドスパをサービスしたり、徹底的に顧客満足を上げる方向に振り切りました。

こちらは逆に、最初は少し厳しそうでした。ただ、既に自分のお客様を持っていたので「なんとか食べていけるよ。たまに遊びに来てね」と。私も半年に一度は顔を出していました。

2年後——予約の取れないお店になっていました。

特に広告もかけず、目の前のお客様を大切にし続けた結果、紹介のお客様で溢れたのです。

同じ実力の2人を分けたのは、技術ではなく「値付けの思想」でした。
安さで集めた店は、安さを求める人で埋まり、やがて回らなくなる。価値で選ばれた店は、価値を分かる人が人を連れてきて、勝手に育っていく。

私の店のカットは5,800円(平均は4,000円)です

先輩たちの姿を思い出して、私は意識を変えました。もう安売りはしない。目の前のお客様をとことん楽しませ、とことん満足して帰っていただく。それだけを考えるようにしたんです。

私の住む田舎では、カット料金はだいたい3,000〜5,000円、平均4,000円くらいです。うちは5,800円。東京に比べれば全然安いかもしれませんが、この地域ではかなり高い部類です。

でも、お客様から「高い」と言われた記憶がありません。思っている方はいるかもしれませんけどね(笑)。それでも普通に来てくださいます。むしろ、こう言われることすらあります。

「あなた、もっと取ってもいいのよ。予約が取れないんだから、値段を上げなさい」

「あなたと話していると元気が出る」「時間が経ってもスタイルが崩れない」「シャンプーが上手」——ありがたい言葉をいただきますが、勘違いしてはいけないのは、私がひたすら喋っているわけではない、ということです。静かに読書をしたい雰囲気の方には、こちらから話しかけません。話を聞いてほしい方には、うんうんと頷きます。その人が何を求めているかを読む。それだけです。

この方たちは、値段で店を選んでいません。カットやカラーの技術だけでもありません。この時間に、癒しを買いに来てくださっているんです。

15年越しに来てくれた、喫茶店のお客様

価値で選ばれるとはどういうことか。忘れられない出来事があります。

うちの店には、目立つ看板がありません。入り口のドアにカッティングシートと、おしゃれなロゴマークがあるだけ。15年前のオープン当時は、「喫茶店ができた」と噂になりました(笑)。美容院なんですけど。実際、喫茶店だと思って入ってくる方が何人もいて、「美容院なんです」と言うと、残念そうに帰っていかれました。一応、名刺はお渡ししましたけど。

それから15年。3ヶ月ほど前のことです。初めてのお客様が、席に着くなりこう言いました。

「私ね、昔、ここを喫茶店だと思って入ってきたんですよ(笑)」

「ああ、ありましたね。あの頃、結構そういう方いらしたんですよ」

「それから一度も来なかったんだけど、お友達がいつもきれいな髪形をしているから聞いてみたの。どこに行ってるの?って。そうしたらここだって言うから。話が面白くて、シャンプーも上手だって。一回来てみたかったんだけど、なかなか予約が取れなくて。最近ちょっと予約が取れそうだったから、思い切って予約したの。お店に入った瞬間、昔のこと思い出しちゃって。あの時はごめんなさいね」

その方、今月も予約が入っています。

——さて、ここで問題です。この方、お金の話を一言もしませんでしたね。

友達の髪形。話が面白い。シャンプーが上手。予約が取れない(=人気の証明)。この方を15年越しに連れてきたのは、割引でもクーポンでもなく、全部「価値」でした。もちろん、お金を気にする方もいます。でも、お金だけじゃないんですよ。

そして、道具選びの話

ここまでは価格の話でした。最後に、これからのあなたの「道具選び」の話をさせてください。実は、同じ法則が働くからです。

独立直後、顧客管理や予約の道具を「まず無料か、一番安いやつ」で選びたくなる。その気持ちは分かります。でも、一つだけ考えてほしいことがあります。

3年後の自分を、想像してみてください。
3年後も、面貸し・フリーランスのままでしょうか。それとも、自分の店を構えているでしょうか。スタッフを雇っているかもしれません。

安さで選んだ道具は、多くの場合「個人で使うこと」に特化しています。あなたが成長して、店を持ち、人を雇ったとき——その道具は付いてこられないかもしれません。そのとき待っているのは、顧客データの引っ越し、新しいシステムへの慣れ直し、お客様への再案内。成長した瞬間に、乗り換えの痛みが請求されるわけです。

お客様は、あなたの唯一の資産です。フリーランスにとって、顧客情報は店舗以上に「自分の生命線」です。その生命線を預ける道具は、目先の月額ではなく、「どこまで一緒に成長できるか」で選んでほしい。安さで選んだ客が去っていくように、安さで選んだ道具も、いつかあなたを置いていくかもしれないのですから。

ANEXISの場合
ANEXISは、フリーランスの顧客管理から、一人サロン、スタッフを雇った店舗、多店舗展開まで、同じシステムのまま成長に付いていく設計です。予約・カルテ・レジ・LINE・帳簿づけまでひとつに。次の時代を担う美容師と、長く付き合っていきたいと考えて作っています。詳しくはANEXIS SalonOSのご案内をご覧ください。

まとめ — 独立は、自分の看板で勝負すること

クーポンで学んだ高い授業料、対照的な道を歩んだ2人の先輩、そして15年越しのお客様。30年の現場で見てきた結論は、シンプルです。

安さで来た客は、安さで去る。価値で選ばれた客は、人を連れてくる。

独立とは、自分の看板で勝負するということです。その看板に「安さ」を掲げるのか、「価値」を掲げるのか。価格設定も、道具選びも、すべてはその最初の意思表示なのだと思います。

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